創業期を駆け抜けたスタートアップの採用と組織

サービスをリリースして、約1年が経過し、スマートバンク社はこの度シリーズAラウンドにおいて総額20億円の第三者割当増資を実施しました。

資金調達できたことは大変喜ばしく、プロダクトが一定の実績を出すことができ、またPMFを達成できたからと言えるでしょう。その背景にはプロダクトを開発しグロースさせてきた素晴らしいメンバーの採用と組織面での成長があったからとも言えます。

このエントリーではプロダクトの成長とそれに合わせて、どのような採用や組織運営を行なってきたかを書こうと思います。

👉 対象読者
  ・採用や面接、選考フローといった組織の採用に関わっている方
  ・会社の創業者や、組織運営に責任を持っている方
  ・スタートアップの立ち上げ話に興味がある方

創業から今日までの採用人数の推移

まずは組織のメンバー数の推移を創業から振り返ってみたいと思います。

創業者3名からスタートしたスマートバンク社も、着実にメンバー数を増やし、現在では正社員20名、アルバイトスタッフを含めると30名の規模までメンバーが増えています🚀

内定者を含めると年内にもう少し人数は増える予定で、新しい方々にジョインしていただけるのを心待ちにしています。

正社員の内訳でみると、エンジニアの比率が多いですが、プロダクトローンチ後の2021年以降は Bizdev や PdM といった職域のメンバーも増え、CEO や CXO が行っていた領域を徐々に権限移譲しています。また、最近は機能が増え、問い合わせが増加してきたこともあり、アルバイトのカスタマーサポートのメンバーが増加しています 📈

創業者として非常に嬉しいことの1つとしては、今まで離職者が1人も出ていないことです。 所属しているメンバーにとって魅力的な会社であり続けることを、より一層意識して組織運営に努めたいと思います。

創業期の採用どうしてた?

創業後はどのスタートアップも自分達の事業仮説を信じ、まずはMVPを作成していくことを目標にしているかと思います。 B/43 の MVP はミニマム要件だけでも、モバイルアプリにeKYC / 入出金 / Visaカードの発行と決済といった骨太な機能が必要でした。

👫 MVPを作るのに必要な人材要件
  ・モバイルアプリ(iOSアプリ) → クライアントエンジニアが必要
  ・カード発行(PCIDSS準拠) → セキュアなインフラ環境構築ができるメンバーが必要
  ・金融免許(資金移動業)の取得 → 金融業界での職務履歴があるメンバーが必要

上記のように創業者に足りない能力を補ってくれるメンバーが必要で、いずれのメンバーもリファラル経由でアプローチを行い、初年度は創業者にクライアントエンジニア / インフラエンジニア / 金融業界出身のバックオフィスメンバー3名を加えた形でスタートしました。

身も蓋もないですが、ここは創業者の地力の採用力が試されるフェーズでもあると思います。創業チームに足りない能力が何かをキチンと把握して、過去の同僚やネットワーク経由で泥臭く採用を行うしかないかなと思います。

6席の机から始まったDay1のオフィス風景

ストックオプションについて

ここでストックオプションについても触れておこうと思います、弊社では会社の創業直後にSO(ストックオプション)を設計し、導入しています。創業者と上場まで伴走してくれるメンバーに対して、アーリーステージの未整備な環境にご入社いただくリスクインセンティブとして設計しています。

SOは創業者がどういう気持ちで導入するかによって、立て付けは変わってきますが、代表である @shota の強い意向もあり、創業簿価で株価を信託し長く在籍してもらえるほど還元額が大きくなるように設計しています。採用候補者の方や、在籍してもらっているメンバーにとってより魅力的な提案になるように初期フェーズに一定数のリソースを割いて設計をしたことが今日の採用人数につながっていると思います。

採用をどういう風に進めてきたのか?

採用に関しては、プロダクト開発と同じぐらい重要なものとして取り組んできました。 重要なポイントは採用を人事だけの特別なものとはせず、会社全体で取り組むべき課題として優先する、そして全員で協力し合えるような体制を築くことかと思います。そのためには創業者自らが陣頭指揮を取るべきです。

弊社では創業者を始めメンバー全員で採用に取り組んでおり、スカウトや面接等で20 ~ 30%程度は採用に関する業務にリソースを割いています。チャネルはリファラル採用を中心にしつつ、初手として選考フローや面接の仕組み化、次に採用基準の整備を早々に行ってきました。

smartbank.co.jp

上記ページもメンバーが開発の傍ら要件の整備 → 公開まで行なってくれており、採用にコミットする風土が全社に浸透していると言えるでしょう。また、会社の内情や技術的なトピックを広く知ってもらえるように、2021年から公式ブログの公開も始めています。

blog.smartbank.co.jp

面接はどうやっているのか?

有名な著書ビジョナリーカンパニー2にもある通り誰を会社というバスに乗せるのか?そして乗せるべき人をどうやって見極めるか?は採用における最重要項目かと思います。会社として重視している要件が何なのかを決めて、それを正しく測れる選考プロセスを構築しないといけません。

弊社では Google が実践している構造化面接のガイドに則り、面接の仕組み化を行なっています。

rework.withgoogle.com

実際の弊社の2次面接の流れを紹介すると、下記4ステップを実施しており、1回の面接にかなりの時間を割いています。

  1. 人事と面接官の事前共有
  2. 事前の質問シートに則った面接の実施
  3. フィードバックの記載 & 面接官同士のすり合わせ
  4. 採用責任者 * 人事 * 面接官での評価

構造化面接の全てのエッセンスを盛り込むのは中々ハードルが高いですが、弊社では少なくとも下記のポイントを押さえて実践しています。

💡 実践ポイント
  ・採用する人材の要件を定義し、要件を測れる質問を用意する
  ・質問は予め決まっているが、候補者の方が答えやすいように、事前にもらったエピソードを元に導入部とフォローアップ質問をリライトする
  ・評価担当者が簡単に回答を審査できるように、応募者の回答に対するフィードバックをGoogleFormに入力する
  ・評価担当者が共通の認識を持てるように、要件毎に求める期待値を定義して一貫したプロセスで採点する

整備しているものの全てが順調に行く訳はなく、最終面接への通過率が悪い時期があったり、要件毎の採点が難しかったり、面接官が増えるに従って、用意している質問の意図が面接官どうしで正しく共有できていなかったなどの問題が起きました。

そういった問題に対処するために採用プロセス自体を見直すMTGを人事主導で実践している他、各職種毎での採用分科会を組成して、プロダクトと同様に採用のサイクル自体が改善していくように取り組んでいます 💪

開発組織はどのような構造になっているのか?

実際に事業をやってみて、分かったことですが、Fintech の事業開発は非常に時間が掛かります。1つの機能をリリースするまでに関わるステークホルダーが多く、自社だけで完結しないことが要因として挙げられるでしょう。

例えば最近リリースしたICチップ搭載のカード発行を行うプロジェクトでは4社のステークホルダー(Visaやカード印刷会社など)がおり、案件に応じた要件の調整をしながら、ステークホルダーと足並みを揃えて開発を進めるのは中々難易度が高かったです。実際にこのプロジェクトではリリースまでに半年ほど掛かっています。

上記のこともあり、開発サイクルが長いのでスタートアップが得意とするリーンな開発スタイルが適応させずらく、ビジネス仕様や機能要件を調整するポイントも多いため、メンバー間での密な連携と、チームの総合力が試されます。

弊社では開発の生産性を上げていくために、Bizdev / PdM / エンジニア・デザイナーが揃った1チームを並列で組成することで、常時3 ~5案件ぐらいのプロジェクトを進めています。

組織の今後はどうなっていくのか?

「B/43」が1年間でPMFするまでにやったこと のエントリーでもある通り、親子間での家計管理や、お金を貯めるといったスコープまで含めて開発を行なっていく予定です。

今はまだ、開発チームとしては1つであり、プロジェクト組成時に開発領域やドメイン知識に明るいメンバーがそれぞれアサインされ、人によっては複数のプロジェクトを兼務しながら開発にあたっています。プロジェクトの目的を達成すると、解散し、次の違うプロジェクトにアサインされるといった形です。また、週次単位で開発組織全体の稼働状況の確認をしながら、突発的な Bugfix や、Hot なユーザー課題が見つかった場合は適宜リソース調整をして、案件に当たっています。

現状はスピード感をもって、開発に当たれていると感じていますが、下記のような課題感も持っています。

🔥 課題
  ・長期的な1つの目標にフォーカスして、それを達成できる組織にしていくべき
  ・プロダクトの成長や機能追加が進んだことにより1メンバーが扱える認知負荷が高すぎる
  ・メンバーは集合と解散を繰り返すので、ナレッジや情報資産が蓄積しにくく、属人化しやすい
  ・人によってはプロジェクトを兼務していて、リソース配分が難しい

上記の課題を解決するような組織構造がどうあるべきかは日々模索中です。一度主要KPIをグロースさせることに重きを置いた組織構造への変更も考えましたが、断念もしています。

その要因としては何よりもメンバーが圧倒的に足りておらず兼務体制を維持せざるをえないというのがあります。現状は最適な構造に移るための最低限の人数に達していないと認識しています。

最後に

創業期から今までの採用活動、現状の組織について、振り返ってきましたが、今後もますます採用をどう進めていくかが重要になってくるでしょう。

スマートバンクのB/43が挑む家計管理の未来について のエントリーにもある通り、これからも自分達は家計管理という大きな課題と、市場について取り組んでいきます。親子での家計管理という新たなプロダクトも仕込みつつ、主要KPIのグロース、それを支える素晴らしい技術基盤を本気で作ろうと思っています 💪

ここまで、読んでくださった方に感謝すると共に、少しでもスマートバンク社に興味を持っていただいた方は Recruiting Deckも公開していますので、是非ご覧ください 👋

speakerdeck.com

8月にそれぞれの職種毎に接点を持てるイベントやカジュアル面談も常時受け付けておりますので、よければそちらもチェックしてみてください 👍

リンク集

smartbank.co.jp

connpass.com

connpass.com

connpass.com

おまけ

資金調達の発表をサイトにのせるための写真撮影で久しぶりに創業者の3ショットを撮ってもらいました。2011年最初の起業時にとった3ショットと比較すると、全員歳を重ねましたが、更なる飛躍を目指して頑張っていきたいと思います 😃

2011年 Google創業の地(ガレージ前にて)→ 2022年現在