Fablic, inc のCTOを退任しました。

実は、2012年に創業した Fablic, inc を楽天社への合併のタイミング(6月30日)で退任しておりました。

25歳から約7年間、会社を創業し、フリマアプリを開発、フリマ戦争の真っ只中を過ごし楽天へExit、そして退任と人生の中でもっとも濃い日々を過ごしました。

いろんな方に支えていただきながらの7年間でしたが、折角なので、少し自分がやってきたことを振り返っていけたらと思います。

創業

まず、自分の仕事は考えていた課題の検証、そしてそれを解決するプロダクトを創ることでした。 フリマアプリをなぜ創ろうとしたかは弟の 僕がフリマアプリを創った理由 のエントリーがよくまとまっています。

創業1〜2年目はフリマアプリを開発し、軌道に乗せるまでの開発が主でした。

  • フリマアプリのプロトタイプの開発
  • RailsをバックエンドとしたAPIサーバ / 決済システムの開発
  • AWSを使ったインフラ基盤の構築

当時はCtoCのプロダクトに決済の仕組みをいれるのが難しく(サービスベンダーさんからNGが出る)リリースまでやきもきしたのを覚えています。

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f:id:yutadayo:20120416141218j:plain ※ 創業時は共同創業者全員でガレージ付きの1家屋で一緒に暮らしていました。

この頃は開発しつつもアプリを使ってもらえるかの検証やプロモーションで大学のサークルを周ったりとエンジニアリング以外のことも忙しくしていました。

フリマアプリのPMFはとても早く、1年ぐらいは創業メンバーだけでやっていましたが、とても開発の手が足りなかったので、2年目からエンジニア採用も同時に行っていきました。

この時の教訓

  • PMFが最優先、人が欲しがるものを創れているかの検証を素早く繰り返すこと。
  • あれが足りない、これが足りないと機能追加するのでは無く、検証課題がクリアになる開発のみ優先的に行うこと。
  • サービスが当たるかは分からん、時に技術的負債を生みつつも前に進む。
    • iOSは当時はスピード優先でネイティブでは無く、Titaniumで開発をしていました。
    • 2年後に負債の返済を行いました。

フリマアプリ勃興期

フリマアプリは驚くほどのスピードで成長していき、メルカリのようなスタートアップからサイバーエージェント、Yahoo、LINEなど大手のIT企業が続々と市場に参入してきます。

当時はサービスをスケールすることが大きな課題で、主にデータベースへの高負荷が悩みの種でした。

ボトルネックであったタイムラインの仕様を変えて再実装したり、AWSVPC環境に移行させ、Amazon Aurora を導入したりなどインフラよりの仕事が多かったと記憶しています。

この間、iOSAndroidの大きなリニューアルを何度か行ったり、テレビCMに向けたインフラ強化、ボルネック箇所のチューニング、RIDE という車両に特化したフリマアプリの新規事業開発など、新しいサービスの立ち上げなどもやっていました。

この時の教訓

  • スタートアップの利点を活かして、開発スピードで絶対に大企業に負けないこと。
    • 最も怖いのは大手では無く、同じように死に物狂いでやってくる他のスタートアップである。
  • 目の前の小さいことでは無く、N倍スケールした時にどうなるかという視点で、開発も組織創りも行う。
    • この時は女性限定サービスから男性向けにサービス解放、テレビCMの放映などを実施
  • 採用(それもBigなHiring)や良い開発文化、組織のモメンタムを創り続けるのは創業者の仕事。それをやるためにもっと、権限委譲を早く適切に行うべきであった。

楽天へのExit

2016年に楽天グループ入りした後は、さらなるサービスの強化に向けて、 ログ基盤を整備したり、テレビCMの対策などが主でした。

この頃から、開発の仕事から徐々に離れて、全社採用や、評価制度の再設計、バックオフィス部門のマネジメントなど裏方の仕事が増えてきました。

開発はFablicには本当に優秀なメンバーが沢山いたので、安心して任せることができました。

後半は、新潟に新しくCSの拠点を立ち上げるため、新潟に出張し、オフィスビルの選定から、助成金の兼ね合いで県や市との折衝、オフィスインフラの整備など創業時は思いもしなかった仕事もすることになり、バリエーションも増えていきました。

そして、2018年に会社が楽天と合併し、新体制になったタイミングで、創業者としての役目を終わりにし、退任する決意をしました。 これからもラクマ(旧フリル)は楽天経済圏の力を活かしながら大きな資本力を背景に、もっと大きくなっていくでしょう。

この時の教訓

  • 社員旅行はとても良かった。余裕があれば、全社員でいくことをオススメする。
  • 子会社化した後も会社の文化を拠り所にして、採用を加速させることができた。
  • 本質的でユーザーにとってより良い開発を行おうとする文化、透明度が高く、率直なコミュニケーションが行われる社風を創れたのは非常によかった。
  • 楽天社は数字の達成意識が尋常じゃないほと高かった。開発組織が中心だと、売上などの数字感に弱くなりがちなので売上目標を達成するためのコミットは学ぶことが多かった。

総じて

たくさんのサービスが生まれては消えていく中、フリマアプリという沢山のユーザーに使ってもらえるサービスを創れたことは、1人のエンジニアとして嬉しくもあり、自信にもなりました。

フリマアプリ戦争という過渡期を過ごしたことは起業家として貴重な経験であり、 あのひり付くような、焼け焦げるような混沌と狂乱の中、サービスと会社を大きくするために情熱を傾けた日々を一生忘れないでしょう。

また、本当に自分達は良い仲間に恵まれたなと思います、プロダクトや会社について深く理解し、支えてくれた社員の皆には感謝してもしきれないです。

一方で、正直この7年で自分自身に至らないことも多く、様々な課題が見つかりました。

これから

また Fablic, inc の共同創業者である @shota @takejune と一緒にフリマアプリを超えるようなサービス、課題解決をしていこうと考えています。

今は ANGEL PORT というサービスを開発しています。 起業家でもあり、エンジェル投資家でもある、自分たちから見えた課題の解決と 若い起業家やスタートアップ業界に、自分たちがお世話になり、学んだことを少しでも返していけたらと思っています。

開発の経緯などはリリースノート に綴っていますので、興味があれば是非見てみて下さい。

また、ランチや飲みのお誘い、開発周りの相談等あればTwitterFacebookまでお気軽にご連絡ください!

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最後まで、長文にお付き合いいただきありがとうございました。